医師の残業代請求と病院との交渉
未払い残業代を請求する方法には、病院との交渉と、労働審判・訴訟などの裁判手続があります。ここでは、裁判所を通さず、病院に請求の根拠を示して話し合う「交渉」について説明します。合意が成立すれば、その内容に従って支払いを受けることになります。
交渉による解決の利点と限界
交渉では、裁判手続の日程によらず、支払額や支払時期について話し合うことができます。そのため、双方の見解の違いが大きくなければ、裁判手続よりも早く解決できる可能性があります。また、話し合いは非公開で行われるため、在職中の方が職場との関係に配慮しながら進める余地もあります。病院側が保有する勤務記録について、任意の開示を求めることもできます。
もっとも、交渉で解決するためには、相手方の合意が必要です。労働時間の長さや、宿日直許可の効果などについて見解が大きく異なる場合には、話し合いだけでは解決に至らないこともあります。その場合には、交渉を続ければ合意に至る見込みがあるか、それとも労働審判・訴訟での解決を目指すべきかを検討します。
交渉の進め方
受任後は、内容証明郵便で病院に請求書を送ります。請求の根拠と概算額に加え、弁護士が窓口となること、労働時間に関する資料の開示を求めることなどを記載します。以後の残業代請求に関する連絡は、弁護士宛てに行うよう病院に求めます。
労働時間の把握には、当直表や勤務記録、電子カルテの操作ログなどを用います。一つの記録だけでは勤務内容まで分からないこともあるため、複数の資料とご本人の説明を照らし合わせることが必要です。宿日直許可がある場合には、許可の対象となる業務や時間帯と、実際の勤務内容を区別した上で、請求額を算定します。
支払額の交渉では、請求のうち何が争われているか、その点についてどのような証拠があるかを踏まえて対応します。和解する場合には、金額だけでなく、支払期日や清算の範囲、すなわち何を解決済みとするかも問題になります。方針はその都度ご相談し、ご本人の了解なく譲歩することはありません。
合意した内容の書面化と支払い
合意に至った場合は、支払額や支払期日を合意書・和解書に定めます。分割払いとする場合は、支払いが滞ったときの取扱いも定めておく必要があります。入金後は、報酬金と実費を精算し、その内容をご報告します。
交渉と消滅時効
残業代の消滅時効は現在、各給与の支払期日から原則3年です(労働基準法115条・143条)。退職日から数えるものではなく、交渉を続けていることだけで、時効の完成を防げるわけでもありません。したがって、交渉の見込みとともに期限を把握し、必要に応じて労働審判の申立てや訴訟の提起などの対応を取ることが必要です。
次の段階については、労働審判・裁判のページをご覧ください。全体の流れは手続きの流れにまとめています。
初回相談は無料です(30分程度・オンライン対応可)。給与明細や当直表など、お手元の資料をもとに、請求の見通しと進め方をご説明します。資料が揃っていない場合も、お問い合わせフォームからご相談いただけます。
監修:弁護士 石見拓野(大阪弁護士会所属)/最終更新:2026年9月14日
投稿者プロフィール
最新の投稿
労働問題2026年9月4日医師の残業代請求訴訟
労働問題2026年9月4日医師の残業代請求における労働審判
労働問題2026年9月4日医師の残業代請求と病院との交渉