医師の残業代請求訴訟

医師の未払い残業代をめぐって病院と合意に至らない場合には、訴訟で支払いを求める方法があります。訴訟では、双方が主張と証拠を提出し、裁判所が判断します。労働審判への異議申立てによって移行する場合のほか、争点や証拠の状況によっては、初めから訴訟を提起することもあります。

医師の残業代請求で争点となる事項

残業代の請求額は、労働時間と賃金の定めをもとに算定します。医師の事案では、その前提として、例えば次のような事項が問題となります。

・当直中の時間が労働時間に当たるか、宿日直許可による規制の適用除外が認められるか
・診療準備、学会準備、症例検討などが、業務として行われたものか、自主的な自己研鑽か
・年俸や固定手当に割増賃金を含める合意が有効か
・割増賃金の基礎となる時間単価をどのように算定するか
・各日の労働時間を、どの証拠によって認定できるか

これらを判断するには、制度や契約書の記載だけでなく、実際の勤務内容を明らかにする必要があります。例えば、宿日直許可がある事案でも、許可の範囲と実際の業務を照合し、通常の勤務と同様の業務に従事した時間を明らかにする必要があります。病院側が保有する記録の開示を求めながら、勤務実態を証拠によって示し、法令や裁判例に照らして主張を組み立てます。

訴訟の進み方

訴状を提出すると、被告である病院側から答弁書が提出されます。その後、双方が準備書面や証拠を提出して争点を整理し、必要に応じて証人尋問や当事者尋問を行います。審理の途中で裁判所から和解を打診されることもあり、訴訟を提起した事案が、すべて判決まで進むわけではありません。

審理に必要な期間は、争点の数、証拠の量、尋問の必要性などによって異なります。進行に応じて見通しをご説明します。期日への参加はWeb会議を基本としていますが、ご本人の出頭が必要かどうかは、尋問の有無や裁判所の進め方に応じてご案内します。

付加金の請求

割増賃金が支払われていない場合、裁判所は、未払額と同額までの付加金の支払いを命じることができます(労働基準法114条)。もっとも、未払いがあれば当然に同額の付加金が発生するものではなく、裁判所が判決で支払いを命じる制度です。請求に当たっては、割増賃金の未払いとは区別して、付加金を命じるべき事情や回収の見込みを検討することになります。

判決の後

支払いを命じる判決を得ても、病院が任意に支払わない場合には、預金や診療報酬債権などに対する強制執行が必要となることがあります。また、判決に不服がある場合には、控訴するかどうかを判断します。いずれも、判決の内容、次の手続の見込み、費用を踏まえてご相談します。

費用

交渉から訴訟に移行する場合の追加着手金は22万円、労働審判への異議申立てにより訴訟に移行する場合は11万円です(いずれも税込)。このほかに、訴額に応じた印紙代などの実費が必要です。詳しくは弁護士費用のページをご覧ください。

初回相談は無料です(30分程度・オンライン対応可)。給与明細や当直表など、お手元の資料をもとに、請求の見通しと手続の選択肢をご説明します。資料が揃っていない場合も、お問い合わせフォームからご相談いただけます。

監修:弁護士 石見拓野(大阪弁護士会所属)/最終更新:2026年9月14日

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比治諒人